零海幻想曲
いつか見た遠い夕凪の向こう。魂は果てなき紫の空に沈みゆく。
次々と飛び立つ熱帯魚をぼんやりと見送って、やがて静かなる眠りへ。
そこは深遠の世界。温かい安らぎだけがどこまでも広がっている。
母なる鼓動のように響く音叉の波が、子守歌のように深みに誘う。
生命は灯の点。死は無限の宇宙。
生ける誰しもが行きつく安堵たる闇。いや、永遠の光とも言えようか。
起源に還るのか、未来に遷るのか、それはまた別のお話。
いずれ再び零海の底から産声を上げること。それこそが、命の出会いなのだから。