今日は昔住んでいた懐かしい景色を見に同僚を連れて久々のドライブ旅。 海が見える堤防に差し掛かると、幼いころよく友達と遊んだ狭い路地の入り口。 車が小さいから路地にもスイスイ入っていける。

なんて油断してたら不意に角から対向車が。 しかもどういうわけかかなりこちら側に寄ってくる。 仕方なく停車すると、不機嫌そうな顔をしたおばちゃん運転手が特に挨拶をするでもなく横をギリギリで通り過ぎて行った。

昔からこの辺は確かにちょっと変な住人も多かったなーなんて思い出しながらふと見ると、さっきの車が幅寄せしてきた理由がわかった。 植木鉢が道路上を塞ぐように並べられていたのだ。 おばちゃんはそれを避けようとしてこちら側に寄ってきていたらしい。 その植木の出所を見ると、そこは昔よく通った床屋。 今でも営業はしているようだが、そこのおっちゃんは相変わらず変な性格をしているようで、その植木鉢も何かの抗議のつもりなのだろうとすぐわかった。

しかし同乗の同僚は怒り心頭で、車を降りると植木鉢を手荒にどけ始めた。 仕方なく僕も車を降りて、久しぶりに床屋のおっちゃんにでも会ってみようと店に入る。

「いらっしゃ～い」

相変わらず間の抜けた声で出迎えられたが、向こうはどうやら僕のことを覚えていないらしい。 植木鉢について聞いてみても何だか的を得ない答えばかりでよくわからない。

とりあえず久しぶりにカットでもお願いしようと座ると、相変わらず切れ味の悪いハサミでシャキシャキと散髪を始めた。 しかしこのおっちゃん、この調子でやたらと仕事に時間はかかるものの、実は腕だけはかなり良いのだ。 僕の髪がだんだんすっきりとした昔のステキな髪型に調っていく。

「いらっしゃ～い」 「は？なにしてんのおまえ？」

ほどなくして店に入ってきた同僚は、えらく不機嫌そうだった。