雪月花 第六十一夜 温もり
目が覚めた。
あれから、どれだけ泣いていたのか。
血も、涙も、私には、ないはずなのに。
ただ、枯れるまで、叫ぶだけの――
でももう、その声は、かき消されはしなかった。
降り積もる雪だけが、冷たく、優しく。
お爺ちゃん……
私、どうして……
わからない。
ただ、ここにいちゃいけない、と。
それだけ。
あのときと、同じ――
身勝手に、逃げただけ。
なのに……
……
はる坊……
……
ふと。
白の向こうから。
白い何か。
……兎。
どうして。
だめ。
来ないで。
私、また……
兎は、ただ、ご神木の根に、縋るように倒れる、その腕の中に――
優しく、収まった。
……
……温かい。
そう感じることさえ、思い出せなくなっている。
それだけで、罪深い。
そして――
静かに降り続く雪の中、また、意識が遠のく。
……
声が聞こえる。
……すまなかった。
雪音。
私も――
赦されぬ。
ずっとお前を――
待っていた。
……
……目が覚める。
お爺ちゃん――
目の前の雪が、少しだけ、溶けていた。
兎はまだ、腕の中で、静かに寝息を立てている。
――第六十一夜・了
