フィリピンに引っ越してどのくらいになるかな。 一人暮しにはかなり広いこの家こそ快適だけど、まだまだ異国の生活に馴染みきれないそんな日々。

ある日仕事を終えて家に帰ると、誰もいないはずのリビングの真ん中に奇妙な紙が落ちていた。 それは宝の地図ならぬ、何かの設計図。 手書きながらかなり綺麗に描かれたそれは、どうやらレゴの設計図らしい。

最後にはもちろん完成図もあるのだが、ただの黒い塊のような絵でこれが何なのかはさっぱりわからない。 そんな黒い図の隣には一際目立つ赤い字のメモ。 これを完成すると何やら未来人からメッセージが届くとのこと。

何のことかさっぱりだが、僕はとにかくこの黒一色の巨大な箱のようなものを作ってみることにした。

黒色のレゴを大量に仕入れてそれを一つずつ地道に組み立てること数日、ようやく完成したそれは意外にも巨大で、家に置くと言ったらシャワー室あたりの広いスペースしかない。 未来人からはいつどうやってメッセージが届くのか？わけもわからないままその日は就寝。

夜中、ふと目が覚めたタイミングでシャワー室の方から声がすることに気付いた。

「……俺はただ昼寝してただけなのに、どうして突然こんなところに閉じ込められなきゃならないんだ？」

嘆くようなグチるようなその声はやたらとくぐもっていて、どうやらレゴの中の空間から聞こえているらしい。 何が起きたのか？中に誰かいるのか？しかし開けて確認する勇気などとても出ない。 しばらくベッドの中でヒヤヒヤしながら寝付けずにいると、今度は突然の地震。 スマホからもアラートが鳴るほどの大き目のやつだ。

慌ててベッドわきに置いていたスマホで情報を確認すると、震源は海の方とかなり遠く、揺れの度合いもこのあたりはまだそれほどでもなかったが、ただし今後も揺れに警戒とのこと。 とりあえず夜中だしどうすることもできないし、怖いけどまた寝るしかないと思ってベッドに入るも、シャワー室の方から相変わらずブツブツと声が響いてきてなかなか眠れない。

「……今度裁判になったら絶対にこのことを証言してやる」

相変わらず低い声で何か言っているが何のことだかさっぱりわからない。 しばらくスマホでも見て気を紛らわそうとした瞬間、またアラートが。 今度の震源はすぐ近く。島の中央の山の中の表示。

程なくして轟音とともに激しい揺れ。 どうやらあの山が噴火したらしい。 火山弾が降る恐れがあるためすぐに避難せよとの警告が。 これはヤバイ。 近くに丈夫な避難所はあっただろうか？

あわあわとごたついていると、今度は突然のプッシュ通知が。

「あの転送装置を作ったのはあなたですか？私は西暦2999年から詳細を確認しています」

来た。これだ、未来人からのメッセージ。 でも今はそれどころじゃない。早く頑丈な屋根のあるところに逃げなくては。

まだ不慣れなフィリピンの島の真ん中で大災害。とりあえず慌てふためきながら最低限の荷物だけ抱えて外に出てみると、暗闇の向こうで轟々と赤い光が燃えていた。