電車の中は自分ひとり。ボックス席の車窓から雪深い外を眺める。空はどんよりと低い雲。今は雪は落ちていないがこれじゃいつ荒れてもおかしくない。

「え～次は～一車中～一車中～」

車内アナウンスが流れる。今晩の宿を予約したのは確か八車ナントカって駅だったな。このあたりも青森の五戸や八戸みたいに数字が付く地名になってるということなのか。雪深いところってみんなそうなのかな？ なんて考え事をしていてうっかり降りる駅を間違えたらシャレにならない。

「ンまもなく～一車中～一車中～終点で～ございます～」

え、終点？乗り換えがあるなんて聞いてないぞ？大丈夫なのかこんなところで降ろされて？ まさか乗り継ぎに失敗したらこんな田舎の無人駅で雪中野宿なんてことに？いやそれだけは絶対に避けねばならない……

急にドット絵のRPG風の画面で駅に電車が到着。 ドアが開いて自分と思しきキャラがスマホを見ながら電車から降りてくる。

「えーと乗り換えのホームはっと……」

無造作にホーム中央あたりまで来たところでピタリと足が止まり、スーッと画面が引くとその両脇には睨み合う集団。

左側は極妻のような和服姿の姐御、反対側には大店の番頭のような半纏を羽織ったスジモン。 お互いに獲物を解禁した多勢の武装集団を引き連れ、ギラついた視殺戦を繰り広げている。 今にも血の雨が降りそうな現場のど真ん中に無防備に足を踏み入れてしまった自分。

状況を察してとっさにダッシュで車内に引き返すも既の所でドアが閉まり顔面から激突。あっツー。

「列車から離れてくださーい」

無情なアナウンス。

これは次の一歩をどちら側に踏み出すかでこれからの運命が変わっていきそうだな。